サンバは、リオ・デ・ジャネイロでアフリカ系黒人の奴隷労働者たちが持ち込んだ、Batucada(バトゥカーダ、アフリカ音楽の影響を受けたブラジルの打楽器のみの構成によるサンバ)などの音楽をもとに、ヨーロッパの宮廷音楽の影響を受けたショーロやルンドゥーなどの音楽要素がとりこまれ1910年代に確立しされました。
1930年代に普及と隆盛を迎え、ブラジルを代表する音楽ジャンルとなりました。
もともとは黒人を中心とする「奴隷労働者階級の音楽」なので、歌われる内容といえば、生活そのものを題材としたもの、人種差別や政治体制への批判などが中心でしたが、後に白人を中心に比較的穏やかなリズムで叙情的な内容も歌われる、Samba Canção(サンバ・カンサゥン)なども生まれました。サンバ・カンサゥンはさらに発展し、1950年代後半から1960年代前半には、アメリカの音楽などの影響を受けた中産階級の若者たちを中心に、リズムをさらにシンプルにし、叙情的な歌詞をのせて歌うサンバ・ボサノヴァ (Samba Bossa Nova)が成立し流行しました。
また1960年代から1970年代にかけては、リオデジャネイロの黒人文化だったモーホのサンバが再発見され、受入れられて行き、1980年代には、数人編成で演奏するスタイルPagode(パゴージ)が成立しました。大規模なカルナヴァル(カーニバル)のサンバに対して、個人パーティー的で周囲の皆で共に合唱できる気軽さが受け、大流行しています。
【ダンスとしてのサンバ】
サンバダンスは17世紀に、バイーアに住んでいたアフリカ人奴隷の踊りが元となっています。その後、ポルトガルの文化的要素が融合し、リズムや踊り方が変化しました。音楽を演奏しながら周りで手を叩きながら輪を作って踊り、交代で人が中に入って踊るSamba de Roda(サンバ・ジ・ホーダ、サンバの輪)が、アフリカ系ブラジル人の地域的大衆文化の一大要素へと発展しました。
バイーアからリオへ人々が移住するとともに、サンバ・ジ・ホーダは、20世紀のブラジルの国家的アイデンティティーの最大のシンボルとなった都会のサンバの進化にも影響を与えました。
サンバの踊り方は足や腰の動きを基本とし、ほとんど即興となります。現在のサンバショーにおける振り付け(コレオグラフィー)は現代的かつ欧米のダンスショーの形式を取り入れたもので、あくまでもサンバは基本的に即興の踊りが中心で、またその醍醐味であるとされています。
サンバパレードにおけるダンスはサンバ・ノ・ペという、いわゆるサンバステップをもとに様々なバリエーションを個人個人が表現することが本来のサンバのダンスといわれています。なお、サンバパレードにおけるサンバステップに長けたソロダンサーは、Passista(パシスタ)といわれます。
また、サンバはカルナヴァルだけでなく、サロンやダンスホールで行われるペアダンスもあります。ただし同じペアダンスでも、社交ダンスや競技ダンスのサンバとはまったく異なり、ブラジルにおけるサンバのペアダンスは、Samba de Gafieira(日本での略称はガフィエイラ、ガフィエラ、ブラジル本国ではサンバ)といわれ、日本での愛好家も多くいます。
【カーニバルのサンバ】
リオをはじめとするブラジルの各都市で行われるカルナヴァルでは、毎年、Escola de Samba(エスコーラ・ジ・サンバ(略してエスコーラ)というチーム単位で順位、優勝を競い合います。
各エスコーラは、カルナヴァルが終るとすぐに翌年のテーマを決め、それに添って台本が作られ、曲や歌詞の作成を行い、どの曲が相応しいかエスコーラ内でコンテストして、それが決定するとカルナヴァレスコ(パレードの総合監督)によってアーラ(グループダンス)やアレゴリア(山車)の数を決め、それらのファンタジア(衣装)などをデザイン。曲が決定すると、クアドラという練習会場で、Bateria(バテリア)という打楽器隊によって練習が繰り返され、そこでダンスも練習します。
毎年、これによってサンバ・パレードが繰り広げられ、パレードの審査を行うコンテストによって順位が決定されます。これらの大規模なパレードはかつてはその都市のメインストリートで行われていましたが、1983年にリオデジャネイロにおいてサンボードロモ・ダ・マルケス・ジ・サプカイが建設されて以降、大都市では次々と専用スタジアムであるサンボードロモが建設され、ここでパレードが行われることとなりました。
また、サンバをやっている人を総称してSambista(サンビスタ)と言います。日本ではサンバチームで活動している人を中心に、何らかの形でサンバに関わっている人すべてをそう呼ぶ場合がありますが、サンバはやっているがサンバの曲や演奏方法の違い、またバテリアの構成や人数編成などを知らない人をも広義でサンビスタと呼ぶことも多い。しかしこれは適切ではなく、あくまでもサンバが好きで好きでたまらず、サンバについてよく理解し、損得勘定関係なく身体の髄からサンバが沁みこんでいるような人のみを指して、Sambistaと呼ぶのが正しいとされています。
サンバ(Samba)は、ブラジルの代表的な音楽ジャンルの一つです。
日本では、サンバと言うと、羽根をつけた豪華な衣装を身に着けた女性の踊る“ダンス”をイメージされる方が多のですが、それだけではなく音楽全体を指します。ブラジルでは毎年12月2日をサンバの日と定められており、この日に翌年2月前後に行われるサンバカーニバル曲集が発売されるほか、多くのイベントも開催されます。